A HARD DAY'S NIGHT.


「あー、疲れた」
 両手を広げて背中から壁に倒れ込んだ。
 剥き出しになった右腕が地面に当たってがしゃりと音を立てる。
 右腕だけでなく、身体全体が軋むようにギシギシと痛んだ。
 忘れた頃に、こういうハードな夜はやってくる。
 音も立てないで、気配も感じさせないで。
「つーか、何でオレがアンタの戦闘に巻き込まれなきゃなんないんだ」
 愚痴ると、その声はどうやら聞こえたらしかった。
「おや、巻き込まれてくれなど言った覚えはないが」
「じゃあ、あン時オレがアンタを見捨てて逃げてたら」
「末裔まで祟るだけだろう」
 その男は息のひとつも切らさずにそう言って笑う。
 どうしてこの男はこんなにも余裕なのか、エドにはよく判らない。
「やってらんねえ」
 前後左右上空、その何処にも敵がいる。
 ここから身動けば誰かに蜂の巣にされるだけだ。それで終わるだけの自分達。
「何だ、気弱だな」
 彼は見下ろすように馬鹿にする。
「誰が」
「君がだよ、鋼の」
「マサカ」
 精一杯の虚勢で片眉を上げてみせると、それで彼は笑った。
 突付けば壊れてしまうものを、保つのは、オノレの力。
 オノレを立たせるのは彼の一瞥。
 強く冷たい瞳が、いつだって自分を奮い立たせる。
「最年少国家錬金術師をナメんな」
 不敵に笑って見せる。
 彼がその様子に、余裕の表情のまま、
「死ぬなよ」
 発火布の千切れ掛けた手のひらを伸ばした。
「死ぬもんか」
 温もりも判らない、その手を握り返す。

 


 

(終)


BGM@ビートルズ。突発SSでした。
2004/05/29


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