KISS MARK.
Sanzo x Goku >>Very Sweet


 

 暗闇で煙草の紅い火がじりりと悲鳴を上げた。悟空はぼんやりとそれを見つめている。おそらく、ゆらりと紫煙が漂っているのだろうが、それは伏せたままの悟空には見えない。ずり落ちかけたシーツを引き寄せれば、それを阻むように男の手が伸びた。
「……何」
「邪魔だろーが」
「だって、寒い」
 そう言って震えるふりをして見せると男は口元を軽くあげて自分を引き寄せた。男は笑わない。時に笑うのは互いの姿すらもろくに見えない闇夜だけだ。自分よりも大きい胸と腕に体を預けると、自分より体温の低い、その微妙な体温差が全身に伝わって、一瞬奮えた。さきほどまで自分に触れていた指が、さきほどとは違う意図を伴って髪を梳いた。少し汗の滲んだ髪の毛が男の指に絡め取られる。
「疲れたか」
「当たり前。――どんだけやったら気が済むのさ」
 小さく息をついてその胸にすがりつく。目の前にある肌に小さく口付けると男がくつくつと喉で笑った。
「誘ったのはそっちだろうが」
「違うよ、そっちじゃん」
 お互いからかうように責めを口にする。そのまま唇に口付けようと身をひねると、体の奥がぎしりと軋んだ。
「……った……」
 痛みに力が抜け、ドサリと男の体の上に身を投げ出す。
「どうした」
「痛い」
「どこだ?」
「――言えるわけねえだろ、そんなの」
 不貞腐れたように悟空は答えた。体の上で自分を見る悟空に、男はわずかに口元を引き上げた。
「……いい眺めだな」
「全然よくない」
「俺はいいがな」
「俺はよくない」
 それでも体を伸ばして指先で唇に触れる。すると、男の唇は自分の指を咥え込んでわずかに噛んだ。指先に痛みがちりりと走る。
 ――ああ、そうだ。
 悟空は思う。
どうせならば。どうせ同じ痛みなら、
 目に見える痛みが欲しい。
「キス、してよ」
 悟空が言うと一瞬男の眉が跳ね上がった。が、静かな暗闇の中、男は乱暴に息を出すと煙草を消して悟空の頭を掴んで、自分に口付けた。
「……ん……」
 口付けを繰り返しながら、その体がゆっくりと反転していく。男が覆い被さって悟空は名残惜しく唇を離した。
 その口元に自分の指を触れた。
 そして、あえかに笑む。
「……好きだよ、三蔵。」
 指先に、ちりりと痛みが走った。

 これは決して消えない貴方の痕。




 (終)




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