wanna be



 どうして貴方は、居て欲しくないときに、いつも傍にいるんだろう。

 ぎゅう、とその腕に力が篭った。
 その力から逃れるように身を捻っても、彼は容易く自分を捕まえる。
「・・・離して下さい」
「嫌だって言ったら?」
「――善いから離して下さい」
 キラは少し苛付いて言った。
 目に浮かぶ涙など、フラガにはとうの昔に判っているのだろう。
 隠すように俯いても、判りきっているように、フラガはキラの顎を軽く持ち上げてしまう。
 そうすると、必死に隠そうとしていた涙の痕さえも見つけたのか、フラガの片眉が上がった。
「・・・ずっと泣いてたのか」
「少佐には関係ないでしょうっ!」
「関係なかったらこんなことしねーけどなぁ」
 フラガは体を屈めると、キラの髪に口付けるように顔を埋めた。
 そのくすぐったさに身を捻れば、そこを狙ってフラガはより強くキラを自分の方へと引き寄せる。
「・・・お前はすぐ泣くんだな」
「放っておいて下さい」
「放っておけたら楽なんだけどねぇ」
 出来ないから困るんじゃないかとフラガは他人事のように口に出した。
 その言い草がキラには気に入らない。
「それなら僕なんかに関わらないで下さいっ!」
「そうだな、関わらずにいられたら楽かもな」
「じゃあ何で僕なんかに・・・嫌だ、もう離してくださいってば!!」
 キラは俯いたまま、フラガの胸を押し返した。
 しかし力は思ったよりもずっと強く、容易く振り払えると思った腕はがっしりと背に回されている。
「離せたら楽なんだろうけどな」
 フラガの低い声が聞こえた。
 その声が意外に真摯で、キラは押し返す腕の力を抜く。
「・・・お前を離せたら、楽なんだろうけど」
 いつものからかいのない声に、フラガの表情を見ようとキラは頭を上げかけたが、今度はその頭をフラガの顎で押さえつけられた。
「――フラガ少佐」
「・・・・・・まあでも結局離せないから、」
 フラガは言葉を切った。
「だから、頼むから、ここで泣いてくれ、キラ。」
 俺の見えるところで泣いてくれ。
 フラガはそう言うと、キラをそっと抱き寄せた。
 もうキラは抵抗しなかった。
 ただ服越しに伝わる温もりが愛しくて切なくて、堰き切ったように喉の奥から熱いものが込み上げた。
 それを止めることは出来なかったが、そっと頭を撫でてくれる手は優しかったから、もうそれで善かった。

 どうして貴方は、居て欲しい時に、いつも傍に居てくれるんだろう。

(終)



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